みなさま、こんにちは!
京都相続相談センターの佐藤です。
今回は前回までの遺言に続き、「認知症問題」について見ていきたいと思います。
今やメディアでも散々取り上げられている認知症問題ですが、
下表、厚生労働省公表による将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、令和7年(2025)年には約5人に1人になるとの推計とあります。
昨今、医療が発展し身体は元気で長寿化している中で自分が分からなくなってしまっては皮肉ですが意味がありません。
私の住んでいる町内でも認知症の方が徘徊するのをよく目にするようになってきました。
さて、この認知症問題となるのは家族への負担もさることながら、大きな法的問題を抱えています。
法律上、認知症になり正確な「意思・判断能力」が低下すると事実上、契約や手続きが出来なくなります。
商品の購入にはじまり病院の診察、もちろん不動産売買などの契約行為、預貯金の引き出し、家族に対する委任行為や遺言すらも出来なくなります。
これでは相続対策どころか認知+介護すらもままなりません。
また更に大きな問題を含んでいるのが「法定後見制度」という国の法制度です。
認知症対策を考えるにはまずこの「法定後見制度」について知っておく必要があります。それでは見ていきましょう。
【法定後見制度】
法定後見制度とは認知症や知的障害、精神障害により意思・判断能力が低下された方を支援、保護することを目的とし家庭裁判所が判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の後見人を選任します。
一般の方はご存じない方も多いので認知症の程度によっては、診療費用の普通預金の引き出し(ATM操作のみ)や近所の診療所への通院程度であれば、ご家族と相談しながら勝手にやってしまうこともあるとは思います。
しかし、介護費用の捻出のため定期預金の解約や実家の売却など本人の意思・判断能力をしっかり問われるような契約行為の際は相手方に立つ金融機関や不動産業者は認知症が疑わしい場合、リスクの高さから受理してくれません。
まして生前の相続対策としての遺言書作成、不動産や生命保険を活用したしっかりとした相続対策は出来ません。
それでは実際に法定後見制度の申し立ての動機別件数割合が下表になります。
やはり、この表からも分かるように看護・介護に関わることやそれに掛かる費用を捻出するためであろう預貯金の解約、引き出しなどで困っていることが分かります。
表の中の相続手続とは、ご夫婦の片方が亡くなられた時に既に認知症であり、遺産分割などの手続きが滞るといった問題かと思われます。
このような問題が動機となり法定後見制度を利用せざるを得なくなります。
では実際に利用する際には家庭裁判所に申し立てをすることになります。
またこの法定後見申し立てをすることができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族や身寄りのない方などは市区町村長や検察官等であることもポイントです。
家庭裁判所への手続きの手間や後見人が選定されるまでに1~3カ月程度の期間を要することになります。
もちろんその間は預貯金などの解約も出来ないため、各種支払いや手続きも出来ないことになります。
さて、次の問題は誰が後見人となるかということです。
裁判所が選定する法定後見人は、成年後見制度の創設時(2000年)、後見人の選任数全体に占める親族の選任数の割合は91%でしたが、2020年には20%にまで大幅に減少しています。
後見人に親族が選ばれない理由は単に候補者となる親族がいない方が多いことが要因ですが、公表されている令和2年上の19.7%は、実際にご家族がいて申し立てても選任される割合は83%程度で約17%は親族以外が選任されているのです。
これは資産額も大きく推定相続人が複数いらっしゃるような場合は被後見人の財産に対する利害関係が深く関係しているため裁判所の判断で親族以外を選任したものと推察されます。
実はこの問題が非常に厄介であり様々な問題を引き起こしてきた事例があります。
親族以外では下記の比率で弁護士や司法書士が多く選任されています。
【法定後見人の使命】
★法定後見人の使命は本人に代わって財産や権利を守り、「本人」を法的に支援する
※裏を返せば「本人」以外は全く考慮しない、「財産権利」を守るのみ、ということです
過去の法定後見制度の悲惨な末路として、実際に下記のようなケースがあります。
【ケース①】
しっかり相続対策もして公正証書遺言もされた方がその後認知症となり、家族以外の後見人が選任され、数年後に相続が発生、遺言書を確認すると家族への感謝と賃貸マンションや自宅を相続させる旨が記載されていました。しかし、改装代が掛かる賃貸マンションは預金が減るとの後見人の判断から売り払われ、介護施設に入るからと自宅も売り払われており、かつ売却を急いだためか相場より随分安い価格で売り払われていました。本人が残された家族のために生前に準備した相続対策と遺言に秘めた想いはすべて水の泡と消えた。
【ケース②】
既に亡くなられたお父様の相続時に残された奥様と娘様が遺産分割協議の際に法的には2分の1づつ相続する権利があるものの、その通り分けると娘が高い相続税を支払うことになり勿体なく思い、奥様の「相続税の配偶者控除」である1億6,000万迄は非課税枠を活用し、仲の良かった2人はどうせ私が亡くなれば娘の財産にもなるし、一旦お母様が相続した形式を取って預金は娘も半分自由に使っていいよと2人で内諾して、その後娘は孫の学費や生活費をもとは父の遺産を取り崩し生活を送っていました。
もともとお母様は軽度な認知症を発症していましたがしばらくして症状が悪化し、その後成年後見人が選任されました。選任された後見人は突然娘に「あなたのところはぜいたくしていませんか?」最初に言われた言葉はこれで、要件はお父様の遺産はすべてお母様の個人の財産であり、認知症が発症してから使い込んだお金はすべて意思判断能力のない人のお金を使い込んだことになる。
よって返還を求めることと、今後預金を一切使わないことと指摘されました。
その後、娘様はお母様に相続が発生するまでは必死で働き生活していくこととなりました。
【まとめ】
必ずしもこのようなケースになる訳ではなく、少しは周りを考慮してくれる士業の方もいらっしゃるかもしれませんが、最初に申し上げた法定後見人の使命はあくまで「本人」のみを支援し、財産や権利を守るのみでありそこに焦点を当てると上のケースも理論上は理解できます。
しかし、率先した相続対策である負債の不動産を売却し、優良な資産に買い替えたり、広い敷地に建つ古い自宅を収益アパートに建て替えることで資産価値向上と節税を両立したりするようなことはもちろんの事、せっかく考えて作成した遺言書すらも意味が無いものになってしまう可能性があるということです。
【最後に】
もう一度言います。65歳以上での認知症は令和7年(2025)年には約5人に1人になるとの推計が出ています。
もはや無視できる問題ではありません。
そこでどのような対策が考えられるのか次回から有効な任意後見制度や家族信託(民事信託)について見ていきたいと思います。
当京都相続相談センターでは、もちろん基本である分割相談、遺言についてのサポートだけではなく、認知症対策に対するご相談も承っております。
ご不明点はお気軽にご相談くださいませ。
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